S/MIME推進協議会会長
東京電機大学名誉教授 兼同大学サイバーセキュリティ研究所客員教授
佐々木良一
S/MIME(Secure / Multipurpose Internet Mail Extensions)が最初に提唱されたのが1990年代であり、デジタル署名によりメールの作成者のなりすましやメール文の改ざんの検知機能を持ち、また、エンドツーエンドでの暗号化による情報漏洩防止機能がある技術として注目され続けてきました。
偽メールによる被害が増加していくなか、S/MIMEの必要性はますます増加していると考えられます。一方、S/MIMEは広く使われるという状態になっておらず、社会インフラとなるには程遠い状況であるといってよいでしょう。
その理由としては次のようなことが考えられます。
(1)暗号化のためには、メール送信先の公開鍵証明書を入手しておく必要があるが、すべての人に公開鍵証明書を入手して送ってもらう仕組みは慣れるのに時間がかかる。
(2)暗号化メールを転送すると転送先では、復号カギを持たないので復号できず運用がむつかしくなるなどの実用上の問題がある。
このようにS/MIMEを使った暗号化システムの実用化は簡単ではありません。一方、デジタル署名によりメールの作成者のなりすましやメール文の改ざんの検知機能の運用は、メール(特にニュースレターなど)の発信者だけが、公開鍵証明書を入手しデジタル署名を添付すればよいので実用化が簡単です。
そこで、S/MIMEの持つ機能のうちデジタル署名によりメールの作成者のなりすましやメール文の改ざんの検知機能を優先させて普及させるべきだと考えました。このようにしてS/MIMEが普及していけば、一般ユーザもS/MIMEの扱いに慣れてきて暗号化への適用が可能になる道が開かれると考えられます。また、使う人が増加すれば、暗号化メールを転送すると転送先では、復号カギを持たないので復号できないという問題も、最初に暗号文を受け取った人が復号し、転送するなら転送先の公開鍵で暗号化する機能を持たせることで対応できます。さらに、S/MIMEの機能を持たないメールソフトやメールソフト間の細かい差異の問題も使う人が増えれば時間とともに解決していくことが期待できます。
そのような思いの人たちが、S/MIME推進協議会を発足させ、私が会長を務めることになりました。
このS/MIME推進協議会の活動に賛同する人や組織が増え、メールのなりすましなどの問題から解放され、「真正性の文化」を享受できるようになる人が増えることを期待しています。
以上